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一瞬が永遠に。

by 鍋坂樹伸

福岡への往復、新幹線内で二つの出来事が。


ひとつ目は行きの電車。

男性専用トイレから出てきた父の歳くらいの男性から、突然話しかけられる。

「用を足していたら、矢印のところの色が変わったんや!なんか病気かもしれんから不安になっての。」
とのこと。

男性ならわかるかもしれないが、便器内に下向きの三角の絵柄の的があり、そこにめがけてやっていたら、
青色に描かれていた的の色が変色して見えたということ。

「最近の技術ですから、ひょっとしたらそういう演出もあるかもしれませんね。
でも気になるようでしたら、病院に行かれた方がよいかもしれませんよ。」
私はこう答えた。

見ず知らずの人にいきなりトイレの前で用を足した時の出来事を話され、
なんだか不思議な気分に。
話しかけやすいのかな…?



ふたつ目は帰りの新幹線で。


昼前に高松でアポがあったので、06:08発の新幹線で帰る。

博多ー岡山間はトンネルが多く窓際に座っていてもそれほど景色が見えるわけではない。
ましてやこの季節は夜明け前だからなおさら。


でも、そうこうしていると世の中は明るくなる。


いくつかのトンネルをくぐり、スマホのマップを立ち上げ山口県の岩国を意識したタイミングで、
トンネルとトンネルの間、あっという間の時間に景色が切り替わる。


コントラストの低い世界。
目に入る風景、川からは湯気が立ちのぼっていた。


はっと心を鷲掴みにされた。


朝日が当たり白く光る湯気は、奥に向かう川をうっすらおおっている。
景色が見えたのは1秒にも満たない。一瞬。

写真や動画を撮っていたらいい思い出になっただろうなと残念だった。
しかし、この風景は脳裏と心に深く濃く焼き付いた。


写真の楽しさは「一瞬が永遠」になること。


誰かも書いていたが、かしこまった写真や私が普段行なっている広告写真がよいという話ではなく、
むしろ飾らない、意識していない写真が思い出にはいい。
構図も関係ない。
少々ブレてても、切れててもいいと思う。

このときは、こんな心情だったと。
風景写真の場合は「こんな気持ちのときにここにいた!」と、
写真が思い出の後押しになる。


私の住まいや行動範囲内で、冬のはじめに川から湯気が立つ風景が珍しいので印象深いという話ではなく。

被写体の「環境」(気温・新幹線が通過した時刻・川の水温・天気)と、
見る側の「心情」があっての話。

私以外の人が見たら、普通の冬の風景で、なんの感動もなかったかもしれない。


ただ私は心をグッと掴まれ、スローモーションのような時間が過ぎている感じがした。

その時の心情がそうさせたに違いない。


一瞬が永遠に。

1秒にも満たない景色が、一生忘れられないほど脳裏に焼きつく。
とか。
反対に長時間の出来事が一瞬に感じたり。
とか。

数字で表すと客観的で正確な表現ができるのかもしれない。
ひとの感覚や気持ちは案外適当だ。
時間をかけて出来事『甘く』も『苦く』も変えてしまう。
写真でいうところの(こんな色だったかも…。)『記憶色』のように都合よく。



長時間に思える出来事も一瞬の連続で、決して長いわけではない。
一瞬を大切に。
「ひと」「もの」「こと」に誠実に向き合って。





【 写真 】スーパムーン 2017.12.3
月に願いを込め、月光浴をたのしむ。
バタバタとしたスケジュールを終え、ほんの短い時間ではあったが、
私のその日の締めくくりにはちょうどよい時間の過ごし方だった。


鍋坂樹伸
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