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御礼

by 鍋坂樹伸

ありがとうございます。

日々たくさんの人たちにお会いして、行き交う言葉です。

10年ほど前、ある人物との出会いがありました。

衝撃的な出会いでした。

プリントした写真をみていただき、初対面、叱咤激励をいただきました。

別れた直後、再び撮影に現場を訪れ、その日のうちに再撮影し直し、翌朝一番で現像所へ走りました。

2度目はプリントではなく、ポジフィルムを見ていただき、その瞬間から3年間お仕事をさせていただきました。

見た目はもちろん、話しかた、生きかた、選択、何を見ても格好よく、「相手にならない。」「足元にも及ばない。」とはこのことを言うのだなという感覚をおぼえました。

ただただご一緒させていただくだけで暖かくてやさしい時間が流れました。

とても怖いと感じる人もいたとききます。

最初は私もそうでしたが、食らいついていこうと決めた瞬間からすべてが変わりました。

いくら要望がきつくても、ご一緒させていただ時間は、あたたかく、やさしいと感じました。

お会いする度に驚くべき出来事にあふれていたのですが、一貫して示してくれる揺るがない姿がありました。

その姿を見る度に、自分の根底に流すべき血はこうありたいと思いました。

後にも先にも私にかけてくれた言葉は、この一言でした。

「あっと驚くようなような写真を撮りなさい!」

会話というか一方的に言われた言葉です。

月日が流れ、撮影をしていると、通りすがりに「いいねえ〜いいねえ〜♪」と聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟きハッパをかけてくれました。

私に声をかけるときは名前を呼ばれることはなく、要件を直接言ってこられました。

声をかけていただくだけでも恐れ多い、背筋が伸びて直立不動だという方もいました。

出会った当初私のことを「あの若手カメラマン」と呼んでいたようです。

しかし、すぐに私のいないところで「なべさん」と名前で呼んでくれたようです。(私は聞いていません。笑)

当時の私のような実績も何もない者が撮影をさせていただくこと、頭ではわかっているつもりでも理解できておらず、やはり今思い返しても、とんでもない機会をいただいていたと思います。

ここ数年その案件について口にすることはなくなりました。

でも心の中に強い記憶として刻まれていて、最近またほぼ毎日思いだしていました。

同じことはできなくても、少しでも近づきたいという気持ち。

あの時かけてくれた言葉のあたたかさ、やさしさが忘れられなかったのだと思います。

あの日ご指導いただいた言葉と、感じた気持ちを忘れずに、1ミリでも近づけるようこれからもっと精進します。

広告写真家 鍋坂樹伸

初めてお目にかかった日、事務所から帰るとき。

そう、激励をいただいた後、玄関まで見送っていただきました。

そして私のような者に向かって敬礼をしてくださいました。

あのシーンは今でもカラーで目の奥に焼きついています。

当時その重要な意味がわかりませんでした。

本当に申し訳ございませんでした。

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